2005年11月06日
湯けむりの町、草津を訪ねて《その11》=長野原草津口駅・ホームにて=

吾妻線の終着駅ではないけれど、草津温泉への玄関口であるこの駅は、その風格を備えているように思う。
川原湯温泉駅から乗ってきた列車は、先頭車輌をテールランプに変えて、折り返しの準備を整えている。
ローカル線にしてはたくさんの乗客を降ろし、それぞれに改札に向かったあと、ホームは静まり返る。
ついさっき、間違えて乗ってしまったお客さんと、乗務を終えた車掌さんがそこで話していた。
少人数の団体さんに囲まれた車掌さんは、「間違いと気付いたのに降りなかったの?それじゃぁどうにもならないでしょう。気付いたらすぐに降りなきゃぁ」と言い、お客さんは「そうだよねぇ」と笑っている。
その後、どんなふうに話がついたのかは知らないけれど、なんだかその会話にのんびりとした温かさを感じた。
列車から降りてきた若いカップルは、彼氏が先頭車両にカメラ付き携帯を向けた。何枚か撮って「よっしゃ!」とはしゃぐ彼氏を、彼女は静かに「ほら、じゃまやで」とたしなめた。
カメラを持ったまま、二人のほほえましい姿に何気なく見入っていた私を気遣っての一言だった。
何かを求めて乗り鉄の旅に出る私、求めていることは旅先でのこんなちょっとした出会いなのかも知れない。

2005年11月06日
湯けむりの町、草津を訪ねて《その10》=長野原草津口駅=
2005年11月06日
湯けむりの町、草津を訪ねて《その9》=みかん電車すれ違い(川原湯温泉駅にて)=
2005年11月06日
湯けむりの町、草津を訪ねて《その8》=鄙びた温泉街・川原湯温泉=

駅前の大通りを、長野原草津口方面にしばらく行くと、川原湯温泉へのゲートが見えてくる。
そこを左に折れ、坂道を登って行くと、川の流れる音が聞こえてくる。吾妻線とほぼ平行して流れる吾妻川の支流、大沢川だ。
川に架かる橋をわたり、しばらくゆくと、その坂道沿いに、温泉街が現れる。
温泉街、と言っても、華やかな観光地の雰囲気はなく、長逗留しつつ疲れを癒す、湯治場を思わせる。
写真は、温泉街の一番先、共同浴場の「王湯」だ。
入浴料、大人300円。
乗り鉄はここで終わりにして、ゆっくり温泉に浸かっちゃおうかとも思ったけれど、用意もしてないし、お風呂から上がって帰ることを考え、今回はやめとこか、ということになった。
鄙びた感じの温泉街だが、歴史は古く、今からおよそ800年前、源頼朝によって発見されたと伝えられている。
歴史ある温泉街もまた、近い将来、湖底に沈むのだ。

2005年11月03日
湯けむりの町、草津を訪ねて《その7》=水没する駅・川原湯温泉駅=

この列車の終着駅、長野原草津口(ながのはらくさつぐち)のひとつ手前、川原湯温泉駅。
1946(昭和21)年に開業されたこの駅は、湯治場の雰囲気を色濃く残す「川原湯温泉」への玄関口だ。
周辺の山なみと、木々の緑の間に、木造の駅舎がしっとりと馴染む。
しかし、当地には「八ツ場ダム」建設の計画があり、1967年着工以来、今も工事が進められている。
ダムが完成したとき、吾妻線の岩島〜長野原草津口と共に、趣のあるこの駅舎も、湖底に消えることになる。
実は当初、川原湯温泉駅で下車する予定はなかった。
一緒に行った夫が、川原湯温泉なら駅から歩いていかれそうだから、というので、降りてみることにした。
そんなわけで、ダム建設のお話しも、ましてや水没してしまうことも、駅を降りてからわかったことだったのだ。
まもなく姿を消す歴史ある駅舎の姿を、しっかりと目に焼き付けておきたい。

上りホームの待合室 跨線橋から下り方面を見る 上りホームから見た駅舎
