次は佐野か足利か、そんなことを考えながら、大平下から列車に乗った。
でも、車窓から景色を眺めているうちに気が変わった。
大平下の次、岩舟駅で降りようと思う。
大平下から約5分、列車は岩舟駅に滑り込んだ。
ホームは2面、線路は3線もあって、小さな無人駅のわりには立派な設備だ。
駅舎は比較的新しく、シンプルな黒い瓦の切妻屋根。こげ茶色の柱が丁寧に磨きこまれている。
駅舎を出て、駅前を眺めてみる。
駅舎を背にして、駅前の広場を見ると、あちこちに「自転車預り所」の看板が見える。
中を覗いてみると、がらんとした広い土間があって、自転車やバイクを停めるようになっている。
駅前の路上に溢れかえる自転車の列に慣れている私には、とても新鮮で、美しい光景だった。
次の上り列車に乗ろうと、改札を入る。
跨線橋を渡って隣の上りホームへ行く前に、上りホームを眺めてみる。
名所案内の横にさりげなく植えられたエニシダと、ホーム越しに広がる広いたんぼ。
このたんぼこそが、岩舟で降りようかなと思ったわけだ。
田植え前のたんぼはどこか荒涼としているけれど、少しずつ目覚め始めた感じも伝わってくる。
(2006年4月9日・撮影)